顧客体験(CX)は、企業と顧客の関係を強化し、長期的な信頼を築くための重要な要素です。しかし、顧客の体験価値は、顧客の各接点(タッチポイント)毎の主観的・個人的な評価であり、過去の評価にも影響を受けます。このため、時間経過と接点ごとに異なる基準で評価されることを理解し、適切なCX施策を計画・実施することが求められます。タッチポイントにおける体験を体系的に向上させるために、本記事ではエクスペリエンスジャーニーマップを用いて、契約から導入、利用、継続に至るCX施策の計画と実施方法について解説します。エクスペリエンスジャーニーマップとCX施策顧客体験を向上させるためには、顧客がどのような過程を経て製品やサービスを認識し、導入し、継続利用していくのかを明確に把握することが重要です。エクスペリエンスジャーニーマップでは、以下の4つのフェーズに分けてCX施策を検討します。(1) 契約時(ZMoT:Zero Moment of Truth)CX施策のポイント:ブランドの信念と感情の形成事前に得た情報やブランドイメージに基づき、顧客は他の選択肢と比較し、「好ましい」と認知する。価格や特徴だけでなく、信頼性やブランド価値を伝えることが重要。顧客の満足が発生すると、単なる情報比較から感情的な要素が加わり、ブランドへのエンゲージメントが強まる。施策例:ブランドストーリーの発信、口コミ活用、SNSマーケティング。(2) 導入時(FMoT:First Moment of Truth)CX施策のポイント:スムーズな導入プロセスの設計契約後の導入負担が少ないほど、顧客にとって利便性の高い価値として認識される。導入支援サービスや事前準備の整備により、顧客の負担を軽減することが必要。施策例:オンボーディングサポート、チュートリアルの提供、導入専任担当の配置。(3) 利用中(SMoT:Second Moment of Truth)CX施策のポイント:利用経験の積み重ねによる価値向上製品・サービスの利用を通じて理解が深まり、体験価値が形成される。ユーザーがスムーズに操作し、継続利用できるような設計が求められる。施策例:ユーザーガイドの提供、FAQの充実、定期的な利用状況の確認。(4) 蓄積された利用体験(UX+CX)CX施策のポイント:事業課題の解決と成長支援顧客にとって製品やサービスは手段であり、最終的な目的は事業課題の解決や成長。企業と顧客が共通の目的を持ち、長期的な関係を築くことが信頼の構築につながる。施策例:カスタマーサクセスチームの設置、定期的な成果報告、コミュニティの形成。CX施策の計画と実施のポイント(1) 顧客接点ごとのKPI設定各フェーズごとに評価指標を明確にし、継続的な改善を行う。例)契約時:ブランド認知度、導入時:初期設定完了率、利用中:継続利用率。(2) オムニチャネル戦略の活用オンラインとオフラインの接点を統合し、一貫したCXを提供。例)顧客が問い合わせた際に、過去のやり取りをスムーズに参照できる環境を整備。(3) フィードバックループの確立顧客の声をリアルタイムで収集し、改善施策に活かす仕組みを作る。例)定期的なNPS(ネット・プロモーター・スコア)の調査、ユーザーインタビューの実施。まとめ顧客接点ごとのCX施策を計画・実施することで、✅ 顧客の期待に応じた体験価値の提供✅ スムーズな導入と継続利用の促進✅ 長期的な信頼関係の構築が可能になります。特に、エクスペリエンスジャーニーマップを活用し、契約、導入、利用、蓄積された体験の各フェーズごとに適切な施策を講じることが、顧客満足度とロイヤルティの向上につながります。今後、企業はCX施策をより細かく設計し、顧客との接点ごとに体験価値を最大化することが求められます。